「やりぃ!!」 じゃんけんに勝って亘からチョコを貰ったカッちゃんは嬉しそうに包みを高くかざす。 二人は近くの公園に行ってジャングルジムの上に登り腰掛けていた。 「食っていい?」 「うん。いいよ。美味しいかどうかわかんないけどね」 カッちゃんは包みをガサガサと開ける。 箱をパカッと開けるとなかにツヤツヤのチョコレートがコロンと入っていた。 「これなんだ?豚?」 「違うよ!!クマ!クマちゃん!!」 頬を膨らませながら亘はいった。カッちゃんはひとつを手にとるとポン!と口に放り込む。 「あ、ちゃんと甘い」 「そりゃそうだよ。チョコだもん・・・カッちゃん・・もしかして馬鹿にしてる?」 「・・だってよ。初めて作ったんだろ?」 「そうだけど・・いくらなんでも甘くないしょっぱいチョコなんて作れるわけ無いだろ」 「そうなのか?わかんねーよオレ、料理とかしないもん」 亘はちょっとため息をついた。 ある意味3人の中で一番あげがいの無い人物に初めての手作りチョコを渡してしまった気がする。 まぁ、いいけど。もう手作りチョコなんて作ることも無いだろうし。 「でも、要するに好きな奴から貰うと嬉しいのがバレンタインのチョコなんだろ?」 モグモグとチョコを頬張りながらカッちゃんが続ける。 「うん、そうだね」 ジャングルジムの上で足をぶらぶらさせながら亘が答える。 「じゃあ、チョコの味なんて要するに二の次だろ?嬉しいのが先でいいんだろ?オレ、亘が好きだから 亘からチョコ貰えてスッゲー嬉しいぞ」 亘は思わずポカンと大きく目を開いてカッちゃんの顔をまじまじと見る。「ん?」 相変わらずチョコを口に頬張りながら自分をじっと見る亘にカッちゃんが不思議そうな声を出す。 「・・・あはっ」 「なんだよ?」 「ううん。そうだよ。そうだよね。うん、ボクもカッちゃん好きだ!大好きだよ」 「おぅ!」 笑いながら答えるカッちゃんを見ながら亘は声を立てて笑った。 うん。そうだよ。大好きだ。大事な大事な僕の親友。大切な大切な僕の幼なじみ・・・大大大好きだ! 幼い頃暗くなるまで二人で遊んだジャングルジムで亘とカッちゃんはしばらく笑いあっていた。 チョコを食べ終わり二人で帰り始めたとき亘があることに気づいて声をあげた。 「あ、そうだ。カッちゃん!ほら、言う事ひとつ聞くってやつまだだったよ。どうする?」 「あー・・あれな。別にいけどなぁ、オレ」 「ダメだよ。どんな言う事聞いたかあとで美鶴と宮原が確認することになってるんだから」 「そうだっけ・・?うーん・・そうだなぁ。何がいいかなぁ」 「なんでもいいよ。今度一緒にゲーム買うの僕のほうがお金7割出そうか?」 カッちゃんは顎に手をやってしばらく考え込んでいたが珍しくハッとした顔をして亘を見ると 真剣な声で言った。 「亘。んじゃこれ!」 「うん?何?」 カッちゃんは小指を差し出すと亘に向けた。 「黙っていなくなるなよ。何かあっても今度は必ずオレに相談しろよ。・・・黙って絶対消えるな。約束だ!」 差し出された小指を見ながら・・・亘はふいに胸が熱くなる。 ─心配したんだぞ。オレ心配してたんだぞ!ホント死ぬほど心配してたんだぞ! そういって泣きながら自分の腕をつかんだカッちゃん。 ─必ず帰って来るんだよな?うん。必ず帰るよ。絶対に戻ってくるから。 亘は自分の小指をしっかりと絡ませてハッキリと誓った。 「うん。約束するよ。何かあってもカッちゃんにはちゃんと言う。もう絶対黙っていなくなったりしない。 ・・・約束するよ」 その言葉を聞いてカッちゃんはニッコリ微笑んだ。 指きりげんまん・・・幼い頃何度も何度もしたその行為を二人は笑いながら繰り返す。 大事な大事な僕の親友。大切な大切な僕の親友。いつまでもいつまでも。 ・・・・ありがとう。 Happy Valentine!